咆吼

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★グリフィス  ユリエルが王都を離れて一カ月、王都は静寂を守っていた。  その間、ラインバール平原では相変わらず小競り合いが続いていた。一度大きく攻め込まれた事もあり、王は前線に第一部隊の一部と第三部隊を送り込んだ。  ただ、グリフィスだけはユリエルとの約束もあり、部隊を部下に任せて一人王都に残っていた。  その夜も、いつもと変わりなく更けていった。  人々が寝静まる深夜、突如として鐘が鳴り響いた。それは、城壁に取り付けられた大鐘楼のもの。音は王都の全てに響き渡る。  城の士官部屋で眠っていたグリフィスはこの音に跳び起き、寝間着のまま騎士宿舎の屋上へと駆けあがった。  城の外には、おもわず目を覆いたくなるような光景が広がっていた。  外周の城壁から城へ向かって、炎の川のような松明の明かりが連なっている。その数はざっと見ても五千は超えている。現在この城に残っている兵は三千程度だろう。ラインバールに多くの兵を出した後だ。  これで外壁を破られていなければ、応援を要請し籠城という手も使えた。だが、既に門扉は破られ、続々と城へ光は押し寄せている。 「あの方の嫌な予感は、こんなにも当たるものか」  苦々しく吐き捨て、グリフィスは自室へと戻って手早く支度をし、その足で真っ直ぐに王の元へと駆けていった。  王は深刻な顔で主要な家臣の前にいた。グリフィスは一番前に膝をついて礼を取っている。その隣には壮年の騎士が、同じように礼を尽くしている。 「現状は把握できた。ルルエ軍の夜襲で、間違いないのだな?」 「はい。外門は破られ、続々と城へ向かって押し寄せております。その数は、未だ増えているとのこと」 「現在城には三千強の兵がおります。相手方の数は正確には把握できませんが、おそらく倍はいるかと思います」  二人の隊長の報告に、王は深く息をつき瞳を閉じた。
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