不遇の王太子

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 その言葉には、一欠けらの優しさもなかった。明らかな責めに、王は言い訳をしなかった。これは既に決定されたことで、ユリエルの責めに間違いがないからだ。 「五百の兵を預ける。後は、聖ローレンス砦の首座として務めよ」 「それが貴方の精一杯の優しさですか。…いいでしょう、従います。ですが父上、私が何者かを知っていれば、貴方はこれも無駄な足掻きとしるでしょう」  ジェードの瞳が、危険な光を宿して王を見る。   「私は、王の子です」 「そうだ。だからこそ、私はお前が恐ろしい。お前の性は苛烈すぎる。このままお前が玉座に着けば、血の粛清が行われかねない」  その言葉に、ユリエルは柔らかく微笑んだ。母に似た、とても美しい顔で。 「貴方のその配慮に、臣は感謝に涙するでしょうね。そして民は、血の涙を流すのです」  それだけを残して、ユリエルは踵を返し部屋を出た。
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