912人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉には、一欠けらの優しさもなかった。明らかな責めに、王は言い訳をしなかった。これは既に決定されたことで、ユリエルの責めに間違いがないからだ。
「五百の兵を預ける。後は、聖ローレンス砦の首座として務めよ」
「それが貴方の精一杯の優しさですか。…いいでしょう、従います。ですが父上、私が何者かを知っていれば、貴方はこれも無駄な足掻きとしるでしょう」
ジェードの瞳が、危険な光を宿して王を見る。
「私は、王の子です」
「そうだ。だからこそ、私はお前が恐ろしい。お前の性は苛烈すぎる。このままお前が玉座に着けば、血の粛清が行われかねない」
その言葉に、ユリエルは柔らかく微笑んだ。母に似た、とても美しい顔で。
「貴方のその配慮に、臣は感謝に涙するでしょうね。そして民は、血の涙を流すのです」
それだけを残して、ユリエルは踵を返し部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!