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快晴はため息をつくと、ヨイショとしゃがむ。
足元で蹲ったままの親友に目線を合わせると、その天然ものの金髪をガシガシと乱暴に掻き混ぜ、快晴は安心させるようにニッカリと笑う。
「きっとユキちゃんの聞き間違いだって」
「グスッ・・っでも!」
「まぁまぁ、落ち着けって。登山道だったんなら、誰か気まぐれで居たのかもしれないしさ」
「でもっ、まわり、誰もいなかった!」
「いやいや、暗くてわかんなかっただけかもよ?」
「でも!でもぉ」
「わかったわかった」
なかなか落ち着いてくれない親友に、やれやれと体を起こすと快晴は登山道へと歩き始める。
「か、快晴!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。バイク取りに行きつつ確認してきてやるから」
「や、やめたほうが」
「だいじょーぶ。俺、ムテキだから」
「快晴!」
今度は快晴がユキトの言うことを聞かずに、さっさと草木の生い茂る山肌へと分入る。
ボサボサと元気よく生える草で道が分かりづらいが、よく見れば元はちゃんとした登山道だったことがわかった。
ユキトが走りながら踏み倒したであろう、草の不自然な分け目を辿りながら後ろを振り返れば、ユキトの姿は既に見えなくなっていた。ついてきてはいないようだ。
「一人で残してきたの、後で怒られっかもなぁ」
恐怖体験のあとで1人道端に取り残されたことに、きっとあの親友は顔を真っ赤にして怒るだろう。
そんなことが容易に想像できて、快晴はクスクスと笑いながら斜面を登る。
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