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1つ年上の親友兼同僚の突拍子も無い発言に、“宝条ユキト”はガクリと脱力した。 「快晴・・・それ、今の状況わかってて言ってんの?」 ユキトは、絶望的な数字が並ぶPCの液晶を前に自分よりもガタイの良い親友へと冷たい目を向ける。 冷めた視線に快晴と呼ばれた青年は居心地悪そうに、自分の寝癖だらけでハネまくった黒髪をかき回す。 「いや~、なんてーの?キバラシ?キブンテンカン?・・ホラ!気分がハッピーになったら、ユキちゃんの笑顔も増えて、営業も上手くいくー!みたいな??」 「快晴は馬鹿なの?そんなことして仕事が来るなら、俺だって作り笑顔の1つや2つふりまくっての!現実を見ろ!」 このお調子者の親友と脱サラして“何でも屋”を開業してから、早1年・・・。 『何でも親切丁寧に即時ズバッと解決!』をモットーに、公園のゴミ拾いやらお年寄りの家事手伝いやら迷子の子猫探しやらやってきたが・・・ 最近は入って来る仕事も少なく、サラリーマン時代の上司からお情けで頂けるバイク便擬きの仕事ぐらい。 それも月に2~3回ほど。収益はバイクの維持費で全て飛ぶ程度。 街でビラ配りをしたり、近所の会社や住宅に飛び込み営業をかけたりしているが・・・成果は全く無いに等しい。 古めかしい雑居ビルの小さな一室を借りて営業している分、その家賃だけで毎月赤字が増えていく現実。 サラリーマン時代に貯めた開業資金も、最早枯渇寸前である。 「今月の家賃払ったら、もう来月は借金でもしなきゃ・・・」 赤い数字が並ぶPCの画面を泣きそうになりながら睨み付けたユキトの肩を、快晴は「まぁまぁ」と呑気に笑いながら叩く。 「そんなショボくれてたってしょーがねーじゃん?“安慈”にも仕事ねぇか聞いとくしさ!キバラシ、しようぜ!」 「昔の上司に迷惑かけるとか・・」 「安慈は世話好きだから逆に喜ぶって。だから・・・な?ツーリング、行こうぜ?」 「うー・・・まぁ、ここでグダグダしてても仕方ない、か」 「そうそう!近場で良いからササっとキバラシしてさ!んで、明日からまた営業頑張ろうぜ!俺、ビラ配り頑張るしさ!」 「ったく、快晴はほんとお調子者なんだから」 「ははっ」
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