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20m程滑落したところで、運良く止まったユキトは素早く自分の状態を確認すると体を起こす。
滑落した場所が草が生い茂っていて良かったのか、頑丈なライダースーツのおかげか、怪我は擦り傷程度で済んだようであった。
それよりも、大事な愛車の状態が気になってユキトは慌てて周囲を見回す。
「あ!あんなとこに」
ユキトより断然重い車体は、更に下へと滑り落ちて止まっていた。
斜面を転げ落ちないように、気をつけながらユキトは慌てて駆け寄る。
「っ!・・・よ、良かったぁ。思ってたより軽傷だ」
ペタリと愛車に張り付き、状態を確認するとホッと胸をなでおろす。
タンクの塗装が少しハゲてしまっていたがこれならば走行に問題はなさそうだ。
足場の悪い斜面でなんとか車体を確認したユキトは、また斜面を登り上の方でさっきから必死に自分を呼んでいる声に応える。
「快晴ーっ!無事だから心配すんなー!バイクもこの下で無事だから!」
「ユキト!!良かった!!登れそうか!?」
自分も斜面に落ちそうなぐらいギリギリまで身を乗り出していた快晴は、ユキトの姿を発見すると安堵したように眉尻を下げた。
そんな快晴の言葉にユキトはキョロキョロと辺りを見回す。
200kg近くある車体を人の手で斜面の上に上げるなど、完全に不可能である。
なんとかならないかと思案していると、バイクから少し脇にそれたところに、下へと続く細い獣道のような登山道を見つけた。
傾斜も他より緩やかなように見える。
「あれなら・・・」
斜面を下っていけば、やがて先程まで走っていた道路に出るはずだ。
幸いにもバイクのブレーキも生きているようだし、車体さえ起こせればなんとかなるかもしれない。
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