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「っっっんギャアアァァー??!!出たーーーッ!!?」
低い低い男の声・・・
ユキトの恐怖心はついに限界を突破した。
「イヤだーーーッ!ムリーーッ!!!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
あんなに大切にしている愛車も放り出し、脇目も振らず足場の悪い登山道を一気に駆け下りる。
全身からはイヤな汗が噴き出し、涙まで流しながらユキトは訳のわからないことを大絶叫して走る。走る。走る。
すると、少し先に木々の間からひらけた道路が視界に入った。
道路脇でバイクを停めて此方をうかがっている快晴の姿も。
「カイーぃ!快晴!!助けてぇ!!ウワーーンッ!!出たーッ!!祠壊してごめんなさいぃっ!!弁償しますーっ!ウワーーンッ」
「ユキト?!」
登山道を物凄い勢いで駆け下りてくるユキトに、快晴はギョッと目を剥く。
事故を起こしたにも関わらずいつもの涼しい顔をしていた親友の顔は、見るも無残に涙でグチャグチャ。
大事にしてたバイクは見当たらず、何やら意味不明なことを叫んで取り乱している親友の姿に、快晴も訳がわからずパニックを起こしそうだった。
物凄い勢いのまま、自分に向けて突進してきたユキトを何とか腕を広げて受け止めた快晴は、盛大に泣き叫ぶ親友をどうにかなだめる。
「ちょっ?!なに?!何があった!!?おまっ、ケガは?!バイクは?!」
「~~ッあぁ!こ、こわ、怖かったよおぉぉ!!ほこらぁ!くらくて!おとこ、こえぇ、みみみ耳元でぇー!うあぁん!グスッ・・ゲホッ」
「はあ?!」
足元に崩れ落ち自分の足に縋り付いて未だパニック状態の親友の言葉に、快晴はますます訳がわからなくなった。
(ほこら?おとこ?こえ?誰か変な奴でも居たのか?)
なんとか聞き取れた単語を元に推理してみるが、こんな山肌の木々が鬱蒼とした斜面に誰が居たというのか?
麓の街からそう離れていないとはいえ、整備された道路ではなく、わざわざ使われなくなってだいぶ経ちそうな登山道に?
(あー、もしかしてホラーな感じ?コイツ、そういうの超苦手だしなー・・)
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