第1章 春風は波乱の予感!?

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春の風が、ふわりと甘い香りを運んでくる。 私...山中桃は絶賛イライラしていた。 原因は目の前のアホ、もといクラスメイトの東条のせいである。 「……あのさぁ東条。部活が忙しいとか言ってるけど…委員会ぐら いでられるよね?」 「はぁ?悪ぃ、聞こえねー」 ガキかお前は。聞こえてるでしょうが。 「大体、委員会があーだこーだってお前、つまんねーよ。真面目ぶ ってそんな楽しいか?」 「楽しいわけないでしょうが。てか、毎回私が委員会行くのがめん どくさいんだよっ」 半ギレモードに突入して思わずそう叫ぶと、東条がニヤリと口元を 歪めた。 ヤバい、と思ったときにはもう遅い。 「ほーらな?お前もめんどくさいと思ってんじゃん」 んじゃあ俺パスな、と軽やかに去っていく東条。 くっそぉ。 くっっっそぉぉぉぉ! 「またやられたぁぁぁ!」 山中桃、市立音羽中学二年生。 クラスメイトの東条夏樹に、毎日イライラしてます…。 「ホント腹立つんだよっ」 『わーいいな。痴話喧嘩ーって感じ』 「ちょ、莉奈ってば冷やかさないでよね。東条なんか願い下げの極 みだよ」 『あは、メンゴメンゴ』 電話口でケラケラ笑う親友の莉奈に口を尖らせつつ、私はポッキー をパクリと頬張った。 「私も莉奈みたいに頑張って女子校受ければ良かったかなぁ」 『何言ってんの桃!女子の園の怖さなめないでよ』 莉奈が怒ったように言う。一体何があったんだろ…怖くて聞け ない。 『それにさ、出会いもまったくないよ?私は桃が羨ましいな……桃 も東条くんと付き合ってみればいいのに』 「莉奈っ」 『冗談だって。じゃあねぇー』 プツッと通話が切れて、私はハアーっと溜息をついた。 私だって恋ぐらいしたいよ。 小さい頃から何をやっても平々凡々な私は、何も輝くモノがなくて。 部活に何にって夢中になってる東条が、ちょっと羨ましかったりも するんだ(本人には死んでもナイショだけどね)。 私は...私には何ができるんだろうか。 考えているうちに眠くなってきて(難しい事は考えられない人種な のだ)、私はいつの間にか眠ってしまっていたのだった。 その夜。 桃を見つめる人影があった。 「やはり……似ている」 スーツ姿の彼の手元の写真には、彼の若き主であるドレス姿の少女 が写っていた。 その少女は、……桃に瓜二つだった。
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