スイカのカヲリ

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「西瓜を貰ったんだが、あまりにも美味しかったから、全部食べてしまった。申し訳ない」 我が校の生徒会長とやらは、風紀も正義も貫く女であるが、こと口に入る物へは最大の賛辞を持って暴食の限りをつくす女でもある。 家庭菜園部なるものに所属する我が美妹(愚妹という表現がそぐわないほど美しい妹なのです)が、月白の肌を泥で汚し、兄がいつもお世話になっておりますと恭しく献上した丸々の西瓜は、生徒会室で一人黙々と判子押し作業をしていた彼女に、残念ながらすべて平らげられた。 こちとら副会長の身ながら、彼女の暴挙の後始末として、炎天下で野球部のボール拾いというボランティアに従事し、汗だくの帰還をしたばかりなのだ。 西瓜のひとかけも残さぬとは、あなたは鬼か閻魔かサイコパスかと憤怒する僕に、彼女が両手を差し出した。 「ほら、西瓜の香りがするだろう。君のために、手を洗わないでおいたのだ」 白魚のような白い指から、青臭い瓜の香りがする。 「君のため」 と、発音した彼女の唇に、 僕は言い知れぬ優越感と、 鼓動を覚えた。 終
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