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僕の噺をしようか。物好きな君のために。
僕は鏡の世界の、御伽噺の国に棲んでいる。これは、序盤で話したね。
それで、僕の名前が『栖』だってコトも識っているよね。有夜が、散々スミカって呼んでいたし。
そう、僕は栖。過去を準えるこの御伽噺の国で生まれ育った。イレギュラー。
君たちの住む別世界に〝僕〟の未来は無くて〝僕〟のドッペルゲンガーすらない。
完全に鏡の世界【御伽噺の国】で産まれたのが僕なんだ。
様々な、過去噺を背負い混ざったのが僕と言う存在。
僕は栖。鏡の世界、御伽噺の国に棲む……否(いや)、語弊有りだ。
この鏡の世界【御伽噺の国】を創造して、現実(リアル)の世界の人々の過去噺を準える国を作ったと言ったが正しい。
僕こそがこの世界の支配者で、同時に……この世界は、僕の存在意義なのだ。
ねぇ、今度君もこっちに来ないかな?
有夜が居なくなって、僕はまた独りになってしまったんだ。トモダチが欲しいなぁ。
そうして、姿見と化した手鏡にその栖の指が触れる。
その鏡は、まるで水面に落ちる波紋のように指が触れた部分から輪を広げていった。
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