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まぁ、なんだ。そんな彼女の誘いだし、遊びに行きますか。と、考えていたら件の彼女からのメールである。
栖、アンタまだガラケーなの?
早くスマフォに変えなよね。lineのが早いんだからさ。
ま、理不尽だよねぇ。こんなん言われても。さて置き、今度遊ぶってヤツ来週の月曜、祝日で良い?
あぁ、ゆっくりで良いから考えといてよ。
いや、うん。流石だよ、有夜。ちぐはぐな内容を有り難う。
やっぱり、遊びに行くの決定じゃんか。構わないけどね。来週の月曜? ……予定はないし、あったとしても家事全般だろう。
「よし、返信完了っと」
曇り空は、相も変わらず重たく湿った雨を溜め込み分厚くなっている。
そういえば、さっき有夜はあの雲は今の僕みたいだと言っていたな。
僕が、泣きそうなんてあるわけ無いのに。ほんと有夜は面白いな。然し、そう見えたなら、僕が未熟だっただけだし。そんなの、今はもう過去噺にしてしまえばいいのだから。
「……洗濯物、乾いてないだろうなぁ」
ゆらり風に揺られながら、帰路に着く。
鮮やかな世界が灰色に染まるのに時間は要らないのだろう。この空のように厚い雲に覆われて曇ってしまえば、雲一つ無い晴天だったとしても灰色に変わるように、僕の視得る世界も灰色に変わる。
「ただいま」
なんて言ってみても誰かが返事をするわけではない。お帰りなんて言ってくれる人なんて最初から居ない。
僕らは、過去を準えて生きている。新しい頁を拓いて書くわけではない。誰かの過去と同じ様に僕は過去に生きている。
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