明日

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 僕と有夜は常に一緒にいた。何処に行くにも一緒だった。そんなだから有夜と栖の名前から取って、アリスコンビなんて言われてたんだっけ?  でも其れは懐かしい過去噺。あぁ、あの頃の有夜は、黒髪ロングで蒼いスカートを好んで着ていた。  有夜は、昔から何か約束をした日の格好は白いブラウスに蒼いワンピースだったな。確かに、有夜に蒼はよく似合っていたし、僕はそんな有夜が可愛いなって思っていた。 「キョウも、曇りだな」  御伽噺の国は変化の無い日々を送るんだ。新しい過去噺が追加されない限り、晴れることも雨降ることも無いんだ。  いやコレには、一寸語弊があるかな。新しい過去噺が追加されると言うのは、僕らからして別世界。所謂は、現実(リアル)の世界で新しい赤子が産まれ、其の子供が満10歳に成ることを指す。  別世界で満10歳と成った子供は、この世界で、新しく赤子として生まれる。新しい過去噺の追加と言う訳。  と言っても、理解しづらいかもな。 「アサッテか……。最後に有夜の顔は観ておきたいなぁ」  僕は、ニヤリと無意識に笑ったのだろう。艶々に磨かれた硝子に、自分の歪んだ笑みを浮かべた顔が薄ら映った。  ヤガミ アリヤは、別世界でも明るく社交的な奴のようで、それは自室の手鏡――否(いや)、今は姿見と言うべきか、まぁ、鏡に変わりないが――の中を観ながらそんな事を想っていた。  これは、別世界を映す鏡。そうだな、浄玻璃鏡の様なものと思ってくれて構わない。  そんなヤガミ アリヤだが、此方の御伽噺の世界では可愛い一人の女の子で。  アシタ、何が起こるかなんて判るはずもなく彼女はきっと月曜日、僕とのおでかけを楽しみに白いブラウスに蒼いワンピースを選んでいるのだろう。 「そういうとこ、可愛いんだよ、有夜は」
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