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この、気が触れたとしか思えない妄言を叫びながら土下座するのは幼馴染の
アクエリアス・白羽・キュア
名前から分かると思うが、日本人と外国人……確かドイツ人のハーフだっけか?
日本人離れした長身に光が透けそうなくらいのプラチナブロンドの柔らかい髪に翡翠色の瞳、それに加え男とは思えないシミ一つない清らかな肌。
老若男女問わず誰もが認める絶世の美少年は、折角の美顔をコンクリートの地面に埋める。
……そうだった。
この大変残念な幼馴染は、良く言えばロマンチスト悪く言えば脳内電波な花畑野郎。
齢18にもなろうというのに『僕のお姫様を探すんだぁあ!』と週末になるとフラフラと街を放浪しそのお姫様なる人物を探すと言う奇行を繰り返す。
ああ、これが有名な厨二病って奴なんだなと思いながら毎週お姫様探しに付き合ってやる俺はもっと馬鹿なのかもしれないが……。
本当、コイツは脳内電波な花畑が咲き乱れるファンタジスタ野郎なんだが根は悪く無いんだよ。
それ処か、お姫様探しなんて奇行が霞んでしまうくらい白羽〈はくう〉は____シロは良い奴だ。
荷物を抱えた老婆を助けるのはもちろんだし。
子猫を探す少女の為にドロドロになりながら奔走し。
転校したてで虐めのターゲットにされてた人見知りの少年の手を引きそばにいてくれた。
空気の読めない天然な所も。
脳内花畑な所も。
初めて手を握ってくれたあの日から、そんなの関係無いくらい俺にとってお前はヒーローだった。
だからこれは、お前が気に病む事じゃない。
夏祭りを明日に控えた灼熱の繁華街に、木霊する劈く悲鳴。
俺の身体を貫く鉄柱が地面に突き刺さり、勢いよく流れる血が湯だったコンクリの地面にひれ伏すプラチナブロンドの髪を汚す。
誰にも、どうする事も出来なくて野次馬どもはただざわめくばかりだ。
だんだん気が遠くなる……何か言ってやらなくちゃ……これじゃあまりにコイツが可哀想だ。
「嫌だね……そんなのお前が産めよ」
翡翠色の瞳が、俺を見上げる。
俺は、上手く笑えているだろうか?
霞む視界にお前の泣き顔と、唇に柔らかい温もりを感じて俺の意識は闇に飲まれた。
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