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ハァ、ハァ。胸が苦しい。酸素が足りない。駅まであとどれくらいだろうか。こんなに走ったのは、小学校の運動会以来だ。うっぷ。やばい。さっき急いで食べた朝食のパンが出そうだ。走るのをやめ、乱れた息を整える。
やばい。本格的に出そうだ。地面に座り込んだ。苦しくて涙が出てくる。目の前にあるすべてが涙で歪んで見える。駅に向かう人達が僕を避けるように追い越していく。顔はたぶんこっちを見ているだろうな。目はいつものように汚いものをみるような冷たい目に決まっている。なんでオタクってだけで、腫れ物を触るように扱うんだろう。ほとんどのオタクは、自分の意思で自分の好きなことをやっているだけ。悪いことは何もしていない。好きな事をやって生きていることに誇りだって持っている。僕だってそうだ。
よし。だいぶ落ち着いた。駅まで急ごっと。本気で走るのは無謀だな。小走りでいこう。歩くより少しだけ速いぐらいのスピードで走りはじめた。
駅が見えた。休日の自由を感じさせる色とりどりの服装に身を包んだ人々がそれぞれの目的地に向かうために駅に吸い込まれていく。
「ハァ、ハァ…やっと駅についた~。急ぐでござるよ~」
誰にでもなく自分に言い聞かせるように声を出した。と、その時、構内アナウンスが耳に入った。
「ただいま、信号機故障のため、総武線は、運転を見合わせております」
「ええ~!そ、そんな~。もう絶望的だ…いや!まだ諦めないですぞ」思わず大きな声が出る。周りの視線が痛い。でもそんなの気にしてる場合じゃない。
タクシー乗り場へ走った。一年に一度乗るか乗らないかのタクシーを使うことにした。今日を逃すわけにはいかない。タクシーに飛び乗り、荒い息のまま、目的地を伝える。
「秋葉原まで急いでください!」
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