第1R『オタクで何が悪い!?』

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 約二十分ほどで、目的地のアキバへ到着。 「まだきっと間に合うでござるぞ」 タクシーを飛び降り目的地へ走り出した。休日のアキバの歩道は、人で溢れかえっている。春の陽気のように足取軽く歩いている人をかき分け小走りで駆け抜ける。中央通りを曲がり裏路地にある公園にたどり着いた。 「ハァ。ハァ。間に合ったー」 終了まで時間はまだある。…のはずなのに誰もいない! 「いない。いない。どこにもいない。まだ終わる時間じゃないのにー。あこたんはどこですかー?」 頭をかかえ、キョロキョロしているとそこに知った顔があった。アイドルオタクこと「@(アット)カイエン」氏だ。ちなみこの名前は掲示板やチャットで使っているハンドルネーム。 「これは、これは、コジロー氏ではないですかー。遅いお着きですな~」 「Coジロー」と書いて「コジロー」と読む。僕のハンドルネームで、本名の佐々木小太郎と、宮本武蔵と戦った剣豪、佐々木小次郎とかけている。 「あ!@カイエン氏!あこたんの撮影会はどうしたのでござるか?」 「いやはや、ちょうど今終わった所ですぞ。今日のコスは、なんと!綾波レイだったのですよ!コジロー氏残念でしたなぁ」 「な、なんですとー!なんという不覚」 「まあまあ。私が撮った写真でよければ、後で鯖にアップするから、そんなに落ち込まないで下さいよ~。にしても綾波レイの生のコスは、よかったですぞ~」 @カイエン氏の満足そうな笑みを見て、ますます落ち込こんでしまった。僕の周りだけ重力が十倍になったように大げさに膝から崩れ落ちて地面に膝をつく。アニメでしか見ないような、分かりやすいぐらいの落胆。これが自然に出るから周りからはオタクって呼ばれる。 「それじゃ、コジロー氏、私は次の撮影があるから行きますぞ。また、会いましょうぞ」 そう言うと、@カイエン氏は、飛ぶように走り去った。僕は、落胆のあまり声をかけることすらできなかった。
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