14人が本棚に入れています
本棚に追加
「仕方ない…せっかく来たんだ。イオちゃんと一緒にお宝を探しに行くとしますかー」
自分で自分を慰めながら、リュックを手に取り、ファスナーを開けた。宝箱に手を入れるように高ぶる気持ちを抑えつつそっと手を入れイオちゃんを探る。目はアニメのように輝いているだろう。
「ん?あ、あれ??おかしいなー」
リュックを覗き込んだ。見つからない。今度は頭を突っ込んで奥まで確認する。やっぱり見つからない。
あっ!思い出した。リュックから首を出し、頭をかかえ思わず叫んだ。
「う、うわ~!そ、そうだったー!今日のためにバッテリー抜いて、充電してたんだったー!今頃机の上で寂しくて泣いているだろうなぁ」
イオちゃんとは、必死にバイト代を溜めて買ったデジタル一眼レフカメラ「EOS」のこと。もちろん泣かない。
「おお神よ!どうしてそんなにツンデレなのですかー?」
天を仰ぎ叫んだ。人目なんか気にしない。でも道を行く人は誰一人として振り返らない。それがここアキバ。こんな光景が日常として許される世界。そんな自分を開放できるアキバが僕にとっては心地いいのだ。
開放したらだいぶ落ち着きスッキリした。膝の土を落とし立ち上がり、お気に入りのショップが立ち並ぶ裏路地へと向かった。後ろ姿はトボトボというマンガの擬音が見えたに違いない。
最初のコメントを投稿しよう!