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はやく家に帰ってアニソンでも聞きながらみんなと話でもしますか。みんなとはもちろんフィギュア達のこと。もうすでに僕の中では、妄想の世界でいっぱい。さっさと帰ろうと立ち上がった。
「痛っ!!」
蹴られた足が痛み、うまく立てずしりもちをついた。一気に現実に戻される。目頭が熱くなってくる…。
「泣いちゃダメだ。泣いちゃダメだ。漢が泣いていいのは、大事なフィギュアを失ったときだけだ!」
自分に言い聞かせ、涙をこらえる。
その時、目の前を天使が横切った。アキバのビルの光に包まれ輝く天使。「あこ☆」だった。
今日アキバに来た目的はこの「あこたん」こと「あこ☆」の撮影会だったのだ。撮影会に間に合わず会えなかった反動と身も心もボロボロになっていた僕には、あこたんが光を発して輝いているように見えた。
「あ、あこたん!て、天使だ。まさしく天使だぁ!」
僕は、痛みも忘れすくっと立ち上がった。気がつくと無意識のうちにあこたんの後をつけていた。
後をつける。これはオタクの中でもタブーで決してやってはいけない行為。分かってはいるけど、この日は感覚がマヒしていた。
我に返ったのは、荻窪駅に着いたときだった。
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