第4R『リベンジ』

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試合に出たからと言って、突然体が強くなったわけでもなく、スタミナだって急にはつくわけではない。なのに試合翌日から五キロ走ることができた。そりゃはじめはきつかったけど、五キロ走るって意思を持つことで走り抜くことができた。意思とあきらめない心があれば大概のことはできるんじゃないかと思い始めている。 一ヶ月間、朝練を続けられたらやろうと思っていたことがあった。次の試合への出場だ。次こそ勝ってやる。勝つためにリングに上がるぞ。さっそく今日ジムに行ったら申請しよう。  ジムに着くなり、事務所へ向かった。決意が揺らがないうちに早く伝えたいと思った。深呼吸し、気合を入れドアを開ける。 「たのもー!」 「なんだ!?道場やぶりか!?」 しまった。気合が入りすぎて、間違えた。 「す、すいません。間違えました。失礼します」 平田さんの姿はなく、会長だけだった。会長は、声を出して笑っている。会長の笑っている顔はじめてみたかも。場が和んでよかった。狙ったわけじゃないけど。 「どうした?」 「あ、あの、また試合に、試合に出たいです」 「そうか。ちょっと待ってな」 引き出しから試合のスケジュール表を出した。なんだか、会長の僕に対する態度が柔らかくなっているような気がした。 「次は…、三ヶ月後にオープン戦があるな。三ヶ月後で大丈夫か?」 「はい!大丈夫です」 「わかった。この試合にエントリーしておく」 「ありがとうございます」 よし。練習だ。試合に向けて練習も気合入れていくぞ。 「いい表情になったな」 えっ?会長から僕に話してくれるなんて思いもよらなかったから驚いた。 「あとでミット持ってやるから、体温めておけ」 「は、はい!よろちく、あ、よろしくお願いします!」 目頭が熱くなった。会長が認めてくれたような気がした。伝わるんだ。気持ちが伴った行動は、伝わるんだ。体に力がみなぎる。つらいはずの練習を早くしたくてたまらくなった。
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