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恋の始まりの季節、春
桜、咲き乱れる入学式。
地獄のような受験勉強を乗り越え、
ぼくは今、かつて憧れだった高校へと向かっている。
「おはよ」
途中、親友と合流し、まだ履き慣れないローファーの足音と、ブレザーが擦れる音を聞きながら、どこまでも続いているような青い空を眺める。
前方、注意不足か。
突然の段差につまづき、そのまま地面にダイブしそうになった。
運動神経に少なからず自信のあった僕は瞬時に体制を立て直したつもりだった、が。
右斜め前を歩く人影を避けきれず、ドンッと当たってしまった。
「きゃっ」
「ごめ…」
顔を上げるとそこには、肩まで伸びたさらさらストレートヘアーに抜けるような白い肌の美少女が。
軽く微笑み立ち去る君の後ろ姿に呆然と立ち尽くす僕は、
「なーに見とれてんだよ。
お前わざとコケてんじゃねーよー。」
と茶化す親友の声で現実に引き戻される。
"一目惚れ"という言葉が頭の中を駆け巡り、心地よい春風が恋の始まりを予感させる。
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