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仙台に住んでいたのは大学生のときだから、もう五年前になる。色々あったせいか、仙台の街もこの五年で少し変わった。大好きだったプリンの店がいつの間にか移転していたり、東口のZeppSendaiがなくなったり、その代わりに一番町に新しいライブハウスが出来たりしていた。でもアーケード街の雰囲気は昔とあまり変わらない。賑やかなわりには東京よりも時間の進み方が遅い。この時間だとほとんどの店が店じまいを始めているから、ただの通路のようなものだ。踊り出したい気分にすらなってしまう。記憶と現実を比べながらぼんやりと歩いていると、いつの間にか駅の近くまで来ていた。
補修を繰り返されたペデストリアンデッキは相変わらず縦横無尽に伸びていた。大木のように枝分かれし、また一つに戻ったりしながらビルとビルをつないでいる。左手に金属の手すりの冷たさを感じながら階段を昇ると、皮膚を刺すような乾燥した風が私の体を通り抜けていった。こんな夜遅くに、サングラスをかけた癖毛の男が、その風貌とは似ても似つかないかわいいアクセサリーを売っている。こういう人は昔からよくいる。夜のペデストリアンデッキは行き場のないホームレスと、恋人たちと、サラリーマンの集団と、旅を続けるストリートミュージシャンばかりだ。それぞれが、自分の領域を守るように離れて存在している。
銀色の柵に寄りかかって溜息を吐くと、白い煙が天に昇っていった。まるで煙草でも吸っているみたい。ストリートミュージシャンが歌う無邪気なラブソングが、耳に入る前に泡のように消えていく。好きという言葉を何回重ねても、君が生まれた奇跡を喜ぶなんて言われても、それは私の心を打ったりしない。それどころかこの声で掻き消したいとさえ思う。
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