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◇  結局、どこにいても変わらないのだ。  (せみ)時雨(しぐれ)が頭上から降り注いでいる。土の中でずっと息を潜めていて、ようやく外に出てきたと思ったら繁殖だけして死んでいくなんて、なんて哀れな命なんだろう。子供を残して何になる。自分が死んだ後の世界なんてどうだっていいだろう。  歩いても歩いても、照り返しの強いアスファルトの道と、手入れが行き届いていない草むらしかなかった。こんなところは私の居場所じゃない。でも、この山を下りたところで私のいるべき場所はどこにもないのだ。  どうして私がこんな目に遭わなければならないのだろう。私を虐げている人たちは、地上に出て七日で死んでしまう蝉のようなものだ。私の方がずっと沢山のことを知っている。それなのに、へらへら笑うしか能のない人たちが世界の中心に居座っているのはおかしいだろう。今は苦しくても、いつか私の方が正しかったのだと気付く日がきっと来るはずだ。  でも、こんな世界ならいっそ、などと考えてしまう私の方が、本当はこの世に相応(ふさわ)しくない存在なのかもしれない。その証拠に、どこにも私の居場所はない。     
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