フライトタイム

7/7
前へ
/7ページ
次へ
「お前行動早いな」 「えぇ、まぁ……」 「で、連絡は?」 「来てないですね……」  あれから数日、彼女から連絡はこないままだった。 もしかすると気付かずに捨てられたか、気付いたがそのまま捨てられたかどちらかだろう。 「なんなら、あれから彼女コンビニに来なくなりました……」 「……まぁ、その、なんだ……だれか紹介してやろうか?」 「大野さん、フォロー下手ですね」 「やかましいわ! 辛気臭い顔してないでさっさと帰れ!!」  思い切り尻を蹴られた。 大野さんは怒ると少し乱暴になる。 ただ、やっぱり優しい人だなと思った。  ゴミだしをして着替えをして、帰路につこうとお疲れ様でしたとコンビニを出た。 そこに、見覚えのある子が立っていた。 あの子だった。  いつもと違う格好をしていたが間違いない、彼女だ。 俺は思わず二度見したあと、立ち止まってしまった。 制服じゃない彼女はいつもの3倍魅力的だった。 「……あ」  そして目が合う。 目が合うと、彼女はこちらに駆け寄ってきた。 なんだ、何が起こっている。 どういうことだ。 最早理解が追いつかなかった。 「あの……鎌田さん、ですよね」 「え!? いや、その……はい」  彼女と会話をしている。 彼女が俺の名前を呼んでいる。 彼女がレジ越しではなく、俺の目の前に立っている。 俺を見ている。 彼女が、彼女が、彼女が――。 「その、可愛いペンギンのお手紙……ありがとうございました」 「あ……えっと……」  急に恥ずかしくなる。 顔に血が集まっていくのがわかる。 あぁでも、読んでくれていたんだ。 それがわかっただけで俺は幸せだ。 「ただ、やっぱり怖かったので……今日はその、確認にきたんです」  ではどうして、あれからコンビニに来てくれなかったんだろう。 その疑問は、次の彼女の言葉によって頭から飛んでいった。 確認というのは。 確認と、いうことは。 「鎌田さん。 私、篠塚と言います。 私とお友達になりたいというのは、本当ですか?」 「……はい。 本当です」 「そうですか。それじゃあ……」  彼女はそう言って、俺の前に手を差し出した。 「えっと……これから、よろしくって意味です」 「……!! はい!」  はじめて繋いだ彼女の手は俺が思っていたよりもずっと、暖かかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加