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「お前行動早いな」
「えぇ、まぁ……」
「で、連絡は?」
「来てないですね……」
あれから数日、彼女から連絡はこないままだった。
もしかすると気付かずに捨てられたか、気付いたがそのまま捨てられたかどちらかだろう。
「なんなら、あれから彼女コンビニに来なくなりました……」
「……まぁ、その、なんだ……だれか紹介してやろうか?」
「大野さん、フォロー下手ですね」
「やかましいわ! 辛気臭い顔してないでさっさと帰れ!!」
思い切り尻を蹴られた。
大野さんは怒ると少し乱暴になる。
ただ、やっぱり優しい人だなと思った。
ゴミだしをして着替えをして、帰路につこうとお疲れ様でしたとコンビニを出た。
そこに、見覚えのある子が立っていた。
あの子だった。
いつもと違う格好をしていたが間違いない、彼女だ。
俺は思わず二度見したあと、立ち止まってしまった。
制服じゃない彼女はいつもの3倍魅力的だった。
「……あ」
そして目が合う。
目が合うと、彼女はこちらに駆け寄ってきた。
なんだ、何が起こっている。
どういうことだ。
最早理解が追いつかなかった。
「あの……鎌田さん、ですよね」
「え!? いや、その……はい」
彼女と会話をしている。
彼女が俺の名前を呼んでいる。
彼女がレジ越しではなく、俺の目の前に立っている。
俺を見ている。
彼女が、彼女が、彼女が――。
「その、可愛いペンギンのお手紙……ありがとうございました」
「あ……えっと……」
急に恥ずかしくなる。
顔に血が集まっていくのがわかる。
あぁでも、読んでくれていたんだ。
それがわかっただけで俺は幸せだ。
「ただ、やっぱり怖かったので……今日はその、確認にきたんです」
ではどうして、あれからコンビニに来てくれなかったんだろう。
その疑問は、次の彼女の言葉によって頭から飛んでいった。
確認というのは。
確認と、いうことは。
「鎌田さん。 私、篠塚と言います。 私とお友達になりたいというのは、本当ですか?」
「……はい。 本当です」
「そうですか。それじゃあ……」
彼女はそう言って、俺の前に手を差し出した。
「えっと……これから、よろしくって意味です」
「……!! はい!」
はじめて繋いだ彼女の手は俺が思っていたよりもずっと、暖かかった。
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