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「今岡……!」 驚く私に表情一つ変えず、 「はい」 というと今岡は私に携帯を差し出した。 落下の衝撃か、明るく光るロック画面を一瞥して今岡は少しだけ驚くような表情を見せた。 「本当にパンダ好きなのな」 「えっ、あっうん。まぁ……」 ジーッと画面を見つめる今岡から 「ちょっと!そんなに見ないでよ」 と携帯を奪うと、さくらが 「三和、お礼!ごめんね、今岡くん」 と申し訳なさそうな表情を浮かべた。 「別にいいよ。気にしてない」 本当に気にしてない様子の今岡の表情で、まるで私だけが子供のような気がして 「ありがとう!!!」 と語尾を強めに言った後、小さな疑問が湧いてきた。 「あれ、そういえば今岡何でいるの?今日も休みだったよね」 「あぁ、遅れてる授業の課題取りに職員室きたついでに、誰かいるかなっと思って」 「あっ、今岡も課題か!何だ、私だけじゃないじゃん」 私が露骨に喜ぶと 「まぁ……俺は赤点も取ってないし、竹原先生のこともタケチなんて呼ばないからプリント三枚だけどな」 とさらっと言い返された。 「……どっから聞いてた?」 「えっ?松田が俺のプロフィールを廊下に聞こえるくらいバカでかい声で話してたあたりからかな」 さくらが焦った様子で 「今岡くん、ごめんね!三和、口は悪いけど本当に悪気はないっていうか考えなしっていうか」 とフォローになってないフォローを入れたけど 「いいよ、別に。本当のことだし。じゃっ、俺帰るわ。また」 と今岡は何事もなかったかのように教室を出ていった。 「本当、嫌なやつ!」 「あんたがね!」 少しとがめるように言うさくらの言葉で私はその後あと20個くらいは出せそうだった黒い言葉を飲み込んだ。
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