あの日の君

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「雄大(ゆうだい)!!!みんなを連れて神社に行っとけ!」 そう言うと、男の子は かのん を背負って元来た道を戻り出した。 雄大と呼ばれた男の子は「先に行ってようぜ」と残った子供達に声を掛け、先頭に立って歩き出した。皆、その後をついて行く。 千鶴子は一連の流れをぼうっと見ていた。 ふと、記憶が蘇る。まだ小さかった頃。 今の子供達と同じように、お祭りに行く途中だった。 「今日はお祭りだからね。特別だよ」と母が仕立ててくれた浴衣と新品の下駄を履いて、近所の友達と喜んで出掛けた。その途中。 履き慣れない下駄のせいで指の間が擦り切れてしまった。でも「早く早く」とはしゃいでいる友達には言えない。我慢して歩いているうちに、自然と足を引きずる形になっていたのだろう。小石に躓いて転んでしまった。 転んだ先が、昨晩の雨で出来た水たまりだった。現在のようにコンクリートではない土の道なので、水たまりも泥水だ。茶色い水で湿った浴衣。 友達も呆然と千鶴子を見ている。 どうしよう、お母ちゃんに怒られる? 足が痛い。 どうしよう。どうしよう。。。 涙が盛り上がった時、 「千鶴子、どうした?」と声を掛けられた。 敏明だった。
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