12人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、年月が経ち、お見合いの話が来た。
相手は敏明だった。
まだ家同士で縁談の話をする時代で、見合いの席で初めて相手と対面するなんてことも普通だった為、近所の見知った家からの縁談話ということにびっくりした。
しかも、「敏明の、たっての希望で」と父から聞かされた時には更に仰天した。
そして同時に、嬉しかった。
忘れられなかったのだ、あの背中の温もりが。
縁談はすんなりと話が進み、千鶴子は敏明の元へ嫁入りした。
一度、思い切って「何故、私とお見合いしようと思ったの?」と聞いたことがあった。
敏明の答えは、
「お前が転びそうになったら、今度は転ぶ前に俺が助けたいと思ったから」だった。
敏明も、あの出来事を覚えていたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!