あの日の君

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その後、年月が経ち、お見合いの話が来た。 相手は敏明だった。 まだ家同士で縁談の話をする時代で、見合いの席で初めて相手と対面するなんてことも普通だった為、近所の見知った家からの縁談話ということにびっくりした。 しかも、「敏明の、たっての希望で」と父から聞かされた時には更に仰天した。 そして同時に、嬉しかった。 忘れられなかったのだ、あの背中の温もりが。 縁談はすんなりと話が進み、千鶴子は敏明の元へ嫁入りした。 一度、思い切って「何故、私とお見合いしようと思ったの?」と聞いたことがあった。 敏明の答えは、 「お前が転びそうになったら、今度は転ぶ前に俺が助けたいと思ったから」だった。 敏明も、あの出来事を覚えていたらしい。
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