恋愛でなく自分に耽る

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恋愛でなく自分に耽る

 そんな思わせぶりなことをして。それも背中にしなだれかけてきたからだ。でも元は「人肌が恋しくなることってありませんか?」との言葉を不用意についてしまったからだ。だが、不用意と云いつつ実体として含みをもたせたものであるとの意識は存在していた。しかも、そういった向きの言葉を人影まばらな川辺の遊歩道で云うのは如何にもという具合である。でありつつ皮肉にも作為的でなく極自然に発せられたのだ。もちろん事の成り行き次第ではという考えも及んでいたのは事実だ。  そう、至って普段の立ち居振舞いであった。しかし、そこには事施している面も存した。それは、まさにパラドックスだった。すなわち、普段通りでありながら、実は自身で演じているという。私はこういった具合に、自身をいわば高みから観察していた。さぞ、滑稽であろうところ、蔑む訳でもなく自己を顧みているのだ。だが、もっとも蔑むべきはそういったある種の自己性愛であり、いうなれば病的ともいえる感にあった。そして、それが病的だと思うばかりに苛まれるのだ。
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