封印失敗?

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 そもそも、魔族は全ての体力と魔力を失うと灰となる。キースの施した封印は、魔王が崩れ落ちる刹那、灰から分離した「核」を魔法力で包み、キースの魔法力で織り上げた呪文の書内で保管するというものだ。「核」とは人間でいう所の魂のようなものだろうか。魔王の灰も同じように保管してあり、それを再び合わせることで封印は解かれる。  とはいえ、魔力がなければ魔族は存在を保つことすら難しい。キースは魔力の代わりに魔法力をもって魔王の封印を仮解除するつもりだった。それでどのくらいの形を保てるのか、文献だけでは分からない。 「ほんの少し青と銀が見られたらいいんだから」  自分が何をしているのか、頭の奥では「勇者」のキースが憤怒にかられ叫んでいる気がする。これは人間への背徳であり、共に闘い傷ついた仲間達への裏切りだ。「勇者」ではありえない行為だ。  それでも、魔法陣の上に灰をまく手は止まらない。何故、こうも魔王を乞うているのか自分でもよく分からないのだ。  ――孤独には耐えられるつもりだったんですが。  自嘲する思いで、最後の呪文を口にする。
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