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今度は機内に目を戻し、操縦士の背中を見つめた。空軍の特殊航空支援部隊の中尉である彼は、まるで近所のスーパーまで買い物にでも行くかのような、リラックスした様子で操縦桿を握っている。とても、特殊作戦の侵入地点へ向かっているとは思えない。
「ターバラ軍には気付かれていない」
骨伝導技術を使用した無線から、指揮通信が入った。グレンは誰にもバレないよう、静かに息を吐いた。ひとまず侵入地点へは無事に辿りつけそうだ。
「緊張しているのか?」
右隣に座るパーシヴァル大尉が、グレンの肩を叩いた。彼はアルファチームのリーダーを務めている。配置につく際にはリーダーが先陣を切るので、彼の位置はいつもドアのすぐ傍だ。
グレンは反射的に首を振ろうとするのを止めて、その代わりに小さく「はい」と答えた。ローターの音に掻き消されてしまったが、パーシヴァルには伝わっていた。
彼は真剣な目でグレンを見た。それから騒音に負けない、力強い声で言った。
「いいか、お前はつい昨日まで炭酸を飲みながら戦争ゲームをしていたような若造じゃない。22歳から26歳になる今までずっと軍人として生きてきた。その経験があるからこそ、チームの一員として今このヘリに乗っている。今までの自分を信じろ」
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