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しかし会えるかどうかも分からないのに10日も通うとは、見上げた根性だ。それともただの馬鹿なのか? 各地で紛争が多発し、世界情勢が安定しない今、ソード分遣隊も暇ではないだろうに。
「あなたのストーカー行為についての言及はひとまず置いといて、」
「はっきり言いますね」
「事実ですから。それで、私に一度会ってみたいと思った理由は?」
問えばグレンは一度驚いたようにこちらを見てから、慌てて目を逸らした。残っていた酒を一気に飲み干して、バーテンダーに追加を注文している。
「特に理由なんてありませんよ」
「理由もないのに10日も通ったんですか?」
グレンは答えない。答えられない理由でもあるのかと、徐々に疑心が膨らんでくる。騎士軍人を利用しようと、企業や政治家が接触してくるという話は聞いたことがあった。まさかソード隊員を寄越すとは思えないが、身内に関係者がいないとも言えない。
そんな猜疑心を察してか、グレンは懺悔するように言った。
「残念ながら、本当なんです。ただあなたに会いたかった、それだけなんです」
そうですか。と引き下がっても良かった。いつものノアならば、そうしていただろう。彼は嘘を吐いているようには見えないし、何かを企むような悪人とも思えない。なので、わざわざしつこく追及する必要もない。そう決め付けて。
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