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「そういう手管で弄ばれているのかと思って。あなたはこうして口説かれることに慣れているだろうし」
もう隠すものがなくなったからだろうか。グレンは開き直ったようすで体ごとノアの方を向いた。
「慣れてなんていません。そもそも慣れるほどの経験もない。察しが悪いので、相手の意図に気付いていないだけだった、ということがあったかもしれませんが」
「なるほど。それで、気付いてしまった今、あなたはどうしますか?」
随分と雑な問いかけだ。口説かれるのが嫌ならそう言えということだろうか。
「どうすると聞かれても……私はあなたの名前と所属、階級くらいしか知らないんですよ? 話もまだ少ししか、」
「性別は?」
「……は?」
思わず馬鹿みたいな反応をしてしまった。
「男性と認識していますが……違うんですか?」
「いいえ、れっきとした男ですよ」とグレン。なんだこの質問は。馬鹿にしているのか?
胡乱げな目を向けるノアに対し、グレンは至って真剣だった。
「男に口説かれるのは嫌じゃないですか?」
グレンのグラスがまた空になった。3杯目のウイスキーが目の前に置かれる。成人男性の平均がどれほどのものか分からないのだが、ちょっとペースが速すぎやしないか。
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