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「別に、今のところ不快だとは思っていません。それよりも問題は、私たちがお互いの事を殆ど何も知らないことじゃないですか? 私のことを大して知らない人にどんな言葉を尽くされても、まったく響いてこないのですが」
グレンはまたも笑った。嬉しそうな表情でカウンターに頬杖をついて呟く。
「それもそうだよな。じゃあ改めて、自己紹介から始めましょうか。ソード分遣隊のグレン・ベル軍曹です。グレンと呼んでください」
ノアは差し出された右手を握った。
「ノア・ベイリー少尉です。私もノアで構いません。それと、ここは公式の場ではありませんから、友達言葉で話して頂いて結構です」
そんなに差はないだろうが、恐らくグレンの方が年上だ。それでも彼が敬語で話すのは階級が理由だろう。確かにこちらの方が上だが、所属が違う相手にも畏まられるのはあと2階級ほど昇進してからでいい。
「いいんですか? 騎士軍の階級はその徽章以上の価値があるそうですが」
「世間的にはそう言われていますが、越権行為が許されるわけではありませんし、給与も同じですから、他軍と変わりありませんよ」
「へぇ。それじゃあ、ノアもタメ口でいいよ」
切り替えが早いな。
「ノアは陸士卒?」
「そうだ」とノア。ぎこちないタメ口で返す。特殊部隊のチームは敬語で話さないらしいと聞いたことがあったからタメ口を提案した訳だが、まさか自分の方もタメ口で話すことになるとは思っていなかった。
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