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緊張しているのか、やけに喉が渇いた。ノアは言葉を切る度にちびちびと酒を飲んだ。見栄を張って注文したウイスキーは想像以上に度数が高く、アルコールの衝撃で味覚が吹き飛び正直味わいなどよく分からない。チェイサーの方が美味しい気さえしている。
「それで今少尉ってことは、24歳くらい?」
「ええ」
まだ自力で昇進したことがない新米だ。どの軍でもそうだが、士官学校卒業生は尉官からスタート出来る。配属された先の下士官の方が物知りで、彼らから現場のノウハウを教わるという事も少なくない。もっとも、騎士軍は士官のみで構成されているので、経験豊富な部下に気を遣われるということもないが、例外もある。騎士軍には、その特殊な採用条件の弊害である人手不足を解消する為に、国立の大学で優秀な成績を修めた者を雇う部署がいくつかある。デスクワークが殆どであり、当然ながら近衛隊では採用していない為、やはりノアには関係ないことだが。
「今後は何を目指すんだ? 将官も夢じゃないし、政治家になった人もいるんだっけ。民間企業に天下りしてもいいし……選び放題だな。羨ましいよ」
こういった内容の嫌味は今まで散々言われてきたが、彼の口調はそうではなかった。単純に「すごいね」と言っているように聞こえる。
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