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歓菜さんが部屋から去り、私は一人考え始めました。
私の芽生えかけている自我・意識はレジスタンスの彼女らと共に歩む道を目指したいと願っています。
先程の歓菜さんの同調の言葉を聞き、その意志は更に固まりつつあるように感じました。
(許してもらえるかは分かりません。でも、私は──)
そう考えた時、脳裏のモニターが突如、一人の人影に支配されました。
ゴルグ=ラインソール。
私の養父であり、自我カテクシス欠乏症の私の「意志」となった人物。
今まで自分の主という以外に何も感じてはいなかった彼に、今の私は恐怖を感じていました。
『──やれ。やらなければ、お前もまた、奴らと同じ結末を迎える』
脳裏の彼が言い放った言葉、
忘れるハズもありません。
私は、その言葉を聞いた時の一連の出来事を想起し始めました──。
────
───
──
『立体映像空圧研究所』。
名前こそ研究所と書かれていますが、その本質は全く異なります。
養子選定試験場。
それがこの施設の実態でした。
ここには私と同じ孤児の子供が世界中から何十人と集められ、同じ空間で課された課題をこなすだけという行程を繰り返していました。
「ワンワンッ」
そんなある日、私の目の前に中型の白犬が連れてこられました。
周りを見ると他の子たちにもそれぞれの犬が用意されていました。
一体今回は何をするのか、疑問に思っていると、犬の横に居た施設の所員の男性の方が新たな指示の内容の説明を始めました。
『一ヶ月以内に、犬に指定の芸を仕込ませること』
それが、今回の課題の内容だったのです。
所員の方が去った後、私の前には白い犬だけが残されました。
舌を出してハッハッと呼吸をしている犬は、比較的好意を持ってくれているように見える。
私はその犬の頭の上に手を乗せ、軽く撫でてみました。
すると白犬は目を細め、気持ち良さそうな表情に変わりました。
この子なら簡単に芸を仕込むことができそうですね。運が良かったです。
私は心の中でそう考えていました。
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