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「っ!!」
過去の想起、ゴルグの威圧を思い出した私は、全身が総毛立つような感覚と共に正気に戻りました。
ここはレジスタンスのアジト。決して選定施設ではなく、あれは過去の出来事なのですが、私の手にはあの時締めたシャリテの首の感触が残っているような気がします。
(そう……。私はあれをきっかけに、僅かに残っていた自我を完全に捨ててしまったんです)
シャリテを失った以降の私は、どのような命令でも躊躇することなくこなすようになり、ゴルグ=ラインソールの養子として引き取られることになりました。
そして彼の直接の指揮の元、更なる訓練を重ね、完全な操り人形として完成したのです。
篠槙さんの死を経て新たな自我が芽生えるまで、シャリテのことは覚えてこそいましたが、もう悲しみを感じることは無かったのです。
ですが今は、再び涙を流したくなるほどに悲しい気持ちで一杯です。
でも、それと同時に……。
(やはり、私はゴルグの操り人形なんです。意志など、持ってはいけない)
シャリテを犠牲に完成した私の性質。
それを無くしてしまうことは、彼の死を無駄にしてしまうことではないか。
ゴルグの威圧だけではない、そのことも私の状態を人形側へ振り戻していく要因となりました。
気付けばもう、悲しみの感情は霧散していました。
アジトの皆さんを思い浮かべても、感情が湧き出ることはなく、冷静に分析することが出来る。
私は立ち上がり、部屋の扉の前まで移動します。
そして訓練によって得た演技力を活かし、レジスタンスのメンバーとしての「エリーナ=ラインソール」に戻りました。
「皆さん……おはようございます……。ふわあ」
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