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それからおよそ、数日という時が過ぎ──
このアジトにレルードゥさんが攻め込んできました。
ユリアースさんとノルさんは未だ憔悴している私たちを匿うように奥の部屋に追いやりました。
そして二人だけで何人もの『組織』の構成員を相手にし始めたのです。
変わらず蹲ったままの瑞稀さん、僅かに震えながら祈り続ける歓菜さん、そして躍起になって閉められた扉を叩き続ける成音さん。
皆さん、部屋の中で最後になるかもしれない時間を過ごしていました。
(私だけは殺されずに済むでしょう。そうなれば、『組織』に戻ることが出来る)
少し前に『組織』へ戻ることを頓挫してしまいましたが、今度こそ『組織』に帰還することが出来る。
彼女らがここで全滅されれば、自我の再復活の懸念も消える。
私はお義父さんの傀儡として、彼の為に全力を注げる。
悲しむことも、苦しむことも、悩む必要もないのです。
けれど、そんな時──
この部屋に唯一存在する窓、鉄格子が嵌められているそこからコンコンッと拳でノックされた音が聞こえてきたのです。
「……何?」
真っ先に声を上げたのは成音さんでした。
歓菜さんもビクッと肩を震わせ、窓に不安げな視線を向けています。
その中で私はふらりと立ち上がり、ゆっくりと窓の方へ近づいていきました。
「あっ、エリーナ!」
後ろで成音さんが制止を声を掛けてきます。
理由は当然、この窓の向こうにいるのが『組織』の構成員である可能性が非常に高いからです。
だからこそ私が止まる必要はないのです。
私は『組織』側の人間なのですから。
しかし、本当は予感していたのかもしれません。
この窓の外に、待ち望んでいた人物がいたことに。
窓のロックを解除し、スライドさせて開かせました。
それにより、磨りガラスから次第に見えてきた顔は……。
「篠、槙さん……っ」
あるはずのない、いるはずのない。
死んでしまったハズの彼が、そこに立っていたのです。
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