NDB─初めて過るその想い

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「え、私ですか?」 まさか自分に用があると思わず、つい聞き返してしまいました。 ハラマさんは「ああ、そうだ」と頷きながら足を止めます。 そして用件の内容を話し始めました。 「実は、サブスタンティアティの現状を探る為に、過去の所業を調べていたんだ。そしたら、君に関する情報を見つけてね」 「私に……関する」 嫌な予感がしました。 私に知らせに来るほどの過去の情報。 ハラマさんは私の裏切りに関するヒントを手に入れてしまったのではないのかと。 もしそうであるならば……。 「一体どんなことなんですか?」 「ふむ……それなのだがね」 至って平静を装いながら訊いた私の言葉に対し、ハラマさんは僅かに眉を潜めて言葉を詰まらせました。 やはり彼は私の根幹に関することを知ってしまったのだと確信しました。 「これから話す内容は、君にとってとても大きなショックを受けてしまう可能性が非常に高い。……内容を一切明かさずにこれを聞くのも野暮だが、君にそのショックを受け入れる勇気はあるかい?」 大きなショックを受ける……? 初めはそれに該当する過去が思い当たりませんでした。 しかしよく考えてみれば、私は「ゴルグに温情で拾われた孤児の子」という架空の馴れ初めを広めていたのでした。 拾われたのは私一人ではなく、沢山の子が集められ、養子選定によって選ばれたという事実は、確かに「ショック」に当てはまる内容と言えるでしょう。 もっとも、知っている今の私にとっては特に覚悟もいらないことですが、 ハラマさんが知っている「私」であれば、ここは決死の表情をしておくべきでしょう。 「……大丈夫です。聞かせて、頂けますか?」 「そうか……。では場所を移動しよう。まずは君の耳にだけ入れておきたいからね」 「はい」 私の表情で納得したハラマさんは先導して廊下を歩き始めました。 その背中を追いかけつつ、私は頭の中で思考を巡らせていました。 ──もし彼が、私が裏切り者であることを突き止めていたら。 彼を殺し、レジスタンスの皆さんにはどう誤魔化すのか、その言い訳を。
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