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私はハラマさんを自室へと招待しました。
レジスタンスの初期メンバーである私やユリアースさん、ノルさんには個人の部屋があります。
それは篠槙さんたちが利用する仮眠室を比べれば防音性が高く、秘密話にはもってこいなんです。
無論、ここでハラマさんを殺すことになっても、バレることはありません。
「ふむ、同じビルの中とはいえ、うら若き女性の部屋に入るのは些か緊張するものだ。最も、私のような枯れた男に言われても君は嬉しくないだろうが」
「そんなことありませんよ。さ、どうぞ」
愛想よく答え、彼に椅子を差し出します。
この部屋には椅子は一つしかないので、私はベッドの上に腰掛けます。
「……では、話し始めて構わないかな?」
「…………はい。お願いします」
彼の問いかけに、敢えて溜めを作ってから答えます。
彼らの望む、思う「エリーナ」ならどんな仕草をするのか、俯瞰的に考える感覚。
ああ、戻ってきたなと実感しました。
「まず、君はゴルグ=ラインソールの養子となる以前に記憶が無いと聞いたことがあるが、思い出せるのはどこまでなのかな?」
その質問を聞き、やはり養子になる前の話なのだと確信する。
無論、養子選定までの記憶なら保持しているのだが、これを知っていると伝えるのは不都合が多すぎます。
よって私は困った表情を作りながら、こめかみに指を当てます。
「う~ん……。私がハッキリと覚えているのは、お義父さんが目の前に居て「今日から貴殿は吾の娘となる」と言われたところです。それより前は……」
「そうか……」
私の嘘を信じ、思案するハラマさん。
そして再び話し始めました。
「孤児だった君はゴルグに拾われ、養子となった。それが皆の知っている君の過去だが、それは偽りだと判明したのだ。少なくとも、百名以上は君と同質の境遇の子供たちが居たことが記録されている」
「え……っ!?」
当然ながら知っている情報ではありますが、初耳のフリをしている以上、驚いた表情を作ります。
身体の裏で拳を何度も握り締め、すぐに動ける心構えをしておきます。
ハラマさんはどこまで知り得たのか、それをしっかりと見極め、排除するために。
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