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「そこは立体映像空圧研究所と呼ばれていた施設だ。だがその実態は、ゴルグが「求める条件」を持つ孤児を見つける為の養子選定所だったのだ」
「養子選定……」
いよいよハラマさんが核心に迫ってまいります。
私は姿勢を保ったまま、身体を瞬時に動かす準備を始めます。
そして最後の一線を確かめる為の質問を彼にぶつけます。
「その求める条件とは……何ですか?」
そこで彼が自我カテクシス欠乏症に関わる何かを口にすれば、私はハラマさんに飛びかかるつもりでした。
ですが彼は首を横に振ったのです。
「この施設のデータは一度全て消去されていた。その頃における復元を不可能とする消去方法が適用されいたのだが、今現在の復元技術を利用することで私はある程度の情報を呼び起こすことが出来たのだ。……だが、今君が疑問に思った「ゴルグが養子に何を求めていたのか」については、欠損してしまい分からなかったのだ……」
「そう、ですか……」
身体に込めていた力が抜けて行きます。
自我カテクシス欠乏症について知らないのであれば、まだ誤魔化し続けることは可能です。
少しの間だけとはいえ、命拾いしましたね。ハラマさん。
「この施設に集められた孤児たちは課題を与えられ、失敗した者は弾かれる。それを繰り返すことで候補を絞っていく。そんなやり方がなされていたようだ」
「……つまり私は、最後まで課題を達成し続けた合格者というわけですね。ですが私は、小柄で運動能力も大してない非力な女性です。あまり信じられませんね……」
シャリテを殺した以降にゴルグが課した課題は、自らの心を捨てさることさえ出来ればむしろ簡単に終わらせられるようなものばかりでした。
運動能力がなく、非力であることは本当である私でも、簡単にこなせる程の。
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