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「孤児ではなかった……とは、どういう意味でしょうか?」
理解が及ばなかった私はハラマさんに問いかけました。
ハラマさんは腕を組み直しつつ話し始めました。
「ゴルグが何を目的としていたかは定かではないが、彼は自らが求める才を持つ子を手に入れる為であれば、手段は選ばなかったのだ」
手段を選ばない。
確かにその通りです。
彼の傍にずっと居た私にはよく分かります。
「つまり……家族がいたとしても、サブスタンティアティが両親を殺すことで、強制的に孤児にさせていたのだよ」
「……っ!」
しかしその事実は想像していなかったものなので、私は身体を跳ねさせ、目を丸くしました。
何も私が驚いたのは孤児ではなかった子供が無理矢理孤児にされた事実を知ったからではありません。
それだけなら僅かに可哀想だと思う程度です。
ですがここでこの話を持ち出したということは……。
「そしてエリーナくんも、その一人だ」
「…………」
やはり、と私は思いました。
私の両親もまた殺されていたのです。
完全にゴルグの人形となっている私であれば、その事実を聞いても心が乱されることは無かったでしょう。
ですが今は人形側に大きく傾いているとはいえ、自我がある状態。
自分自身の両親というワードに、私の心は大きく響きました。
『貴殿が記憶を失っているのは、怪我によるものだ。無理に思い出そうとすれば脳に思わぬダメージが及ぶ可能性が高い。それによって吾の人形たる貴殿に不具合が起きてもらっては困る』
脳裏に一つのビジョンが再生されます。
それは私が養子選定を勝ち抜いて、晴れてゴルグ=ラインソールの養子となってからしばらく経った頃の記憶。
ほとんど独房のような部屋で過ごしていた私の前に現れたゴルグが、私に向けて語りました。
『故に貴殿に命じる。今後、自らの過去を想起すること・調査することを禁ずる』
ゴルグによって人形となる教育をこなされた私は何の疑問を覚えることなく「わかりました」と、彼の命令を受け入れました。
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