6人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし自我が垣間見えており、かつハラマさんからの真実を知らされたことで新たな考え方が発生しました。
(ゴルグが禁じてきたのは、記憶に触れることで私に危害が及ぶことを嫌っていたのではなく、都合の悪い事実を知られないようにする為だった……)
ゴルグは用心深い男です。
私が完璧な人形になったとしても、ほんの僅かな離反の可能性を潰す為に記憶の想起を禁じたのでしょう。
ですが……いえ、だからこそ私は気になりました。
私の両親は、一体どんな人たちだったのか。
「……ハラマさん。私の両親に関する情報は……他にはありませんか?」
私が新たな質問をしてみますと、ハラマさんはおもむろに立ち上がりました。
「日誌に書かれていた君の名前は旧姓だった。君が施設に送られた時期に亡くなられた同じ性の人間という条件で絞り込むことが出来たので、見つけるのはそう難しくなかったよ」
白衣の下に着ている服のポケットから、一つのメモリーを取り出して私に差し出します。
「ここから先は私の言葉からではなく、自分の目で確認するのが良いだろうと思ってな」
「……はい」
ハラマさんは施設の情報だけでなく、追加で両親のことも調べてくれていた。
そのデータはこのメモリーの中に。
私は一度、口に溜まっている唾をゴクリと飲み込んでから、受け取ったメモリーを近くに置いてあったミニパソに差し込みました。
するとミニパソには一つの文章ファイルが表示されました。
それをタップして開き、読み始めます。
まず目に入ったのは女性の写真でした。
私と同じ金色の髪をボブの長さで切り揃えた温和な婦人。
記憶に残っていなくとも、それが一体誰なのか考えるまでも有りません。
(この人が……私のお母さん……)
僅かに頭が痛くなるのを感じつつも、私は写真の真横の文字を読みます。
それは写真の女性の名前。
セリアーヌ=『シャリテ』。
(っ!! シャリテ……!?)
最初のコメントを投稿しよう!