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ですがそんな日々は突如終わってしまいました。
夜、寝ていた幼い私は夜中にトイレに行きたくなって目を覚ましました。
一人でトイレを済ませた私はそのまま部屋に戻ろうとしましたが、
リビングの方で僅かに足音がした気がしたのです。
両親がまだ寝ていないのかなと思い、私はリビングの方へと歩いていきました。
そして僅かに開いているリビングの扉から顔を覗かせると……
『任務完了しました』
『うむ。ご苦労』
黒スーツを着た見知らぬ男の人たちが数人立っていました。
どうして夜中の自分の家に居るんだろうと疑問に思っていました。
そう考えながら更に周りを確認すると、
母親と父親らしき人影が血だらけで床に倒れていたのです。
ですが私が両親を見つけたのと、見知らぬ男の人たちが私を見つけたのはほぼ同時でした。
『リーダー、捕獲対象が』
『手間が省けたな。連れて行くぞ』
男の一人が私に近寄り、肩に乗せるようにして担ぎました。
それにより私は倒れた両親の姿を見ることはできても、近付くことは叶わなくなってしまったのです。
『お父さん……お母さん……』
短い手を一生懸命伸ばしますが、両親からどんどん遠ざかってしまいます。
自我がほとんどない私は表情こそ全く変わりませんでしたが、その目尻からほんの一筋だけ透明な滴が流れ落ちました。
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