NDB─初めて過るその想い

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それから数日後、 幼い私は、大人一人入りそうなカプセルの中に入れられていました。 カプセルにはいくつもの機械が繋がっており、白衣を着た人たちが囲んでいました。 『数値安定しています』 『そうか。では実行しろ』 白衣の人に命令したのは、この中で唯一白衣を付けていない黒スーツの男の人。 周りから「ゴルグ様」と呼ばれている人です。 ですがそこで別の白衣の人が異を唱えました。 『しかしゴルグ様! 「ハザード」はまだ完成して間もない装置。実証がまだ済んでいません! それに今回の対象はあまりにも幼すぎます。脳に重大な障害を残してしまう可能性が……』 『構わん』 白衣の人は危険性を提示しましたが、ゴルグという男はそれを即否定しました。 『失敗したところで、「候補」はいくらでもいる。廃人になったら捨てるだけだ』 ゴルグは言い終えると、首を動かして何かを指示しました。 すると、部屋の隅で待機していたらしい別の黒スーツの男二人が、異を唱えた白衣の人の身柄を取り押さえました。 『へっ!? ゴルグ様!!?』 『貴殿のような者は輪を乱す。吾の組織には不要だ。しかるべき処理を行う』 『まっ、待ってください!!』 顔を蒼白にして白衣の人は訴えますが、二人の黒スーツの拘束に抗うことはできず、そのまま部屋から出て行ってしまいました。 ゴルグはそれを一瞥もすることなく、残りの者たちに告げます。 『開始しろ。これ以上の横着は許さん』 『『『は!!』』』 同じような目には遭いたくない、と残りの白衣の人たちはすぐに準備を再開しました。 それを確認したゴルグはカプセルの中に居る私に視線を合わせます。 『エリーナ。貴殿が吾の望む駒であることに期待する』 『ハザード、起動します!』 直後、何かの軌道音が耳元で響き渡り、 記憶を失う前の私の意識は、ここで完全に無くなりました。
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