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「あれ……?」
朝食を終えて少し時間が経った頃、
何故か私は外に一人で立っていました。
新しいアジトのあるビルの森すらも既に抜けていて、眩しい太陽の光が当たる大きな通りの歩道の上で、私は正気に戻ったのです。
どうやら、無意識のうちにアジトを抜け出してしまっていたようです。
「どうして抜け出してしまったんでしょう……?」
自分で自分に問いかけますが、答えは出ることなく雑踏に呑み込まれて行きました。
しかしそこで、私の脳裏に一つの推測が浮かび上がってきました。
「そっか……。戻らなきゃ、いけませんね」
レジスタンスは半ば崩壊。
レルードゥさんの言う通り、篠槙さんという柱を失ったあれは、じきに自然消滅するでしょう。
そもそも、お義父さんが危惧していた人物は篠槙さんだけ。
彼が亡くなってしまった今、私がアジトにスパイとして居続ける理由はない。
だから『組織』に、お義父さんの元へと戻らないと。
そして次の使命を預からないといけない。
あの人の傀儡である私は、その強迫観念に従い、歩む先を決めた。
………………。
の、はずだった。
「どうして、ここに辿り着いてしまったのでしょう……?」
私の目の前に広がっているのは、窓の塞がれた五階建てのビル。
つまり、昨日までいた最初のアジトなのです。
また無意識に動き、ここに到達していたと言うことになります。
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