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「…………っ!」
意識が覚醒すると同時に、私は掛け布団を飛ばす勢いで身体を起こしました。
全身は汗でびっしょりになっていました。
理由は明白です。
何故なら私は、思い出したからです。
全ての記憶というわけではありませんが、状況を理解するには十分なものを取り戻すことができました。
(ハザード……)
それが一体何なのか、私は知っています。
記憶管理装置『ハザード』。
サブスタンティアティが秘密裏に作り上げた、人の記憶を自由に封印・想起させることができる機械。
歓菜さんが記憶喪失なのも、これによって全ての記憶を封印をされているからです。
恐らくは、『組織』の一員としてスムーズに加える為に。
私にも使われていたなんて……。
「──許しません」
ゴルグという男の全てを知ることが出来た私の中に生まれた感情は、怒りでした。
あの人は私が適合者に近しいという、たったそれだけの理由で私の両親を奪いました。
ですがそれだけに飽き足らず、記憶も消すことで、私という存在そのものも殺したんです。
ハラマさんが教えてくれなければ、私は人形のまま、真実を知ることなくゴルグの命令に従い続けていたでしょう。
自分の都合で全てを捻じ曲げた、あの冷酷な男に──!!
「絶ッッッ対に、許しません!! ゴルグ=ラインソールッ!!!」
両拳を痛い程に握り締め、私は怒りのままに叫びました。
今までにないほどの大きな感情の奔流。
真実を知り、記憶の一部を取り戻したことにより、私はようやく私自身を獲得することが出来た──ということを意味しているのです。
もう私の中に「エリーナ=ラインソール」は存在しません。
私は「エリーナ=シャリテ」。
セリアーヌ=シャリテとクロマーズ=シャリテの間に生まれた子供なのです。
それを奪ったゴルグ=ラインソールを、私は全力で恨むと誓いました。
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