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それから数分後、部屋の扉がコンコンとノックされました。
「入るぞ」
扉向こうからそう聞こえ、扉が開くとそこにはライダースーツの彼女がいました。
「ユリアースさん……」
「起きたのか」
私が彼女の名前を呼ぶと、ユリアースさんは一瞬歩みを止めました。
きっと彼女は倒れた私の面倒を見てくれていたから、私が起きているとは思っていなかったのでしょう。
驚きからすぐに安堵の表情に切り替わったユリアースさんは歩みを再開し、ベッドのすぐ傍まで寄せられている椅子に腰掛けました。
「ハラマと話をしていたら突然倒れたそうだな。覚えているか?」
「……はい。すごい頭痛で、意識を失ってしまったんです。今は、残っていませんけれど」
突然気絶して倒れるなどという事態になれば、それまでの状況についても説明されていてもおかしくはないでしょう。
ですが私は、ハラマさんが話したという事実を聞き、身が震える想いでした。
しかしそれを表に出さないように努めつつ、他の疑問について聞いてみることにしました。
「私、どれくらい眠っちゃってましたか?」
「半日ほどだな。もうすぐ夕食が出来る」
「そうですか……」
日を跨いでいなかったことは、不幸中の幸いというところでしょうか。
私たちが決戦に備えて過ごしているこの平和な時間はそう長くありませんから。
ですけれど、今の私にとって「平和」とはとても言えないでしょうが……。
「「……」」
それから少しの間、お互いに何も言いださず、気まずい時間が流れます。
しかしその静寂はユリアースさんが喋り始めたことで破れました。
「別に、ハラマとどんな話をしていたのか、今すぐ問い質すつもりはない。お前にとって、とてもデリケートな話らしいしな」
やはりハラマさんは会話の内容については教えてはいなかったようです。
無論、ハラマさんも私の本質については気付いていなかったのですが、私はその事実に隠しきれずに大きく安堵の息を吐きました。
「……ありがとうございます」
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