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体調に悪い傾向は見られないので、私は部屋を出て皆さんのいる広間へと向かいました。
廊下から扉を開けると、既に皆さんが食卓を囲むように座っていました。
「あ、エリーちゃん!」
「エリーナちゃん、もう平気なの?」
真っ先に声を掛けてきたのは瑞稀さんと歓菜さんです。
そして他の皆さんも次々と安堵した笑顔の表情を見せて下さいます。
「はい、もう大丈夫です!」
ズキリと心が痛むのを感じつつも私は笑顔を作って応えます。
その後、空いている椅子へと向かう途中、ハラマさんと目が合いました。
ハラマさんの表情は、自分のせいで倒れてしまう事態を起こしてしまい申し訳ないと語っている様でした。
なので私は彼に首を横に振ることでそれを否定します。
何故なら、その逆に私は感謝しているのですから。
自我を取り戻すきっかけをくださったハラマさんに。
……でも、今の私は何も返してあげることはできない。
むしろ恩を仇で返してしまっている。
優しく出迎えてくれる皆さんを騙しつづける選択をしたのですから。
そして椅子に腰掛け終えた私の真正面には、篠槙さんがいました。
彼はそっと私に言いました。
「何が原因かは俺は知らないが、また倒れそうになったら誰にでも良いからちゃんと言うんだぞ」
…………。
やっぱり──。
「エリーちゃん? どうしたの!?」
「へ?」
私は瑞稀さんに言われてようやく気付きました。
目尻から幾つもの涙液がポロポロと零れているのに。
でも仕方ありません。
仕方、ないじゃないですか。
だって無理です。
こんな人たちの思いに、報い続けることなんて出来ない──っ!
「ごめんなさい……っ!」
色んな感情がごちゃ混ぜになり、私は衝動的にその場から逃げ出してしまいました。
とんぼ返りのように自分の部屋へと戻り、施錠をしました。
そしたら今まで以上に涙が溢れてきてしまいました。
篠槙さんたちを騙しつづけることなんて出来ない。
でも、真実を話して嫌われたくもない。
そんな二つの気持ちが心を占拠し、私は自分が一体どうすれば良いのかわからなくなってしまいました。
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