6人が本棚に入れています
本棚に追加
瑞稀さんが去って一時間程が経過しました。
ですが私の頭の中は先程の話でいっぱいのままでした。
(デュエマ……)
机の上に広げられているデッキを眺めます。
《サイバー・G・ホーガン》を最大限活用することを目的としたフルクリーチャーデッキ。
このデッキを用いると決めたのは、演技としてのエリーナ=ラインソールが自らの小柄体型を憂いたが為に図体の大きいクリーチャーが沢山投入できる型を好むのではないかと考えたからです。
それ以外の理由なんてない。
そもそも、私にとってデュエルマスターズはただの手段でしかなかった。
デュエマをしなければならない状況、あるいはデュエマをすることが有効だと判断した状況。
その時に私はデュエマを仕掛けました。もちろん、デュエマ好きを装いながら。
(ですが今は……)
私の心の中に、今まで存在しなかった不思議な感覚がくすぶっているのを自覚します。
その感覚は、広げていたデッキをまとめてシャッフルすることでより大きくなっていきます。
──デュエマがしたい。
初めて、私は自発的にやりたいと思ったのです。
自我を持ったが故の思い。
だからこそ私は、それを我慢する術を持ってはいませんでした。
「あ、エリーちゃん!」
数分後、私は広間へと辿り着いていました。
部屋に篭り続けていたが為に、ボサボサだった髪のまま、デッキだけを握り締めて。
そして迷うことなく篠槙さんの近くまで歩き、こう言いました。
「私と戦って頂けませんか?」
これまでの対戦成績で、このメンバーの中で篠槙さんが一番の実力者であることに間違いはありません。
莉実さんの《偽りの名シャーロック》入りの五色デッキを打ち破った《最凶の覚醒者デビル・ディアボロスZ》を所持しているのですから。
だから戦ってみたい。
強いからこそ挑戦してみたいと、私は思ったのです。
「……」
篠槙さんは私の行動が予想外だったからか、少し黙った後、
「ああ。勿論だ」
僅かに微笑んで、挑戦を受け入れてくれました。
最初のコメントを投稿しよう!