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篠槙さんとのデュエマが始まりました。
……正確には、歓菜さんたちが「そのままはみずぼらしいから」と言って、髪をとかしてツインテールに結ってくださってからなのですが。
対戦は途中まで一進一退でした。
篠槙さんの使うデッキは、超次元とそれに伴う追加要素を除けば、三年前に一度辞めてしまった状態のままのデッキ。
なのに私のデッキと互角に渡り合う。やはり彼のプレイングセンスは素晴らしいものがあります。
ですが終盤間際、私はあることに気付きます。
篠槙さんが《超次元ロマノフ・ホール》をマナゾーンにセットしたのです。
彼のデッキで《時空の支配者ディアボロスZ》を出すことのできる唯一のカード。
そして、その状況において《時空ディアボロス》を出すのが最適といえる状態だったのです。
結果、その対戦は押し切ることの出来た私が勝ちました。
けれども私は納得できませんでした。
「今のは私が勝ったことにはなりません! だって《時空の支配者》を出せば、まだ決着はつかなかったハズです!」
私は声を荒げて篠槙さんに詰め寄ります。
しかし篠槙さんはハッキリとそれを否定します。
「いや、お前の勝ちだエリーナ。《時空ディアボロス》は瑞稀の《ファイナルストーム》あってこそのカードだ。つまり、俺だけのカードじゃない。俺とお前の実力比べとしては、俺が負けたんだ」
「そんなことないです……っ!」
怒りながら、私は自分の怒りの感情に内心驚いていました。
自分はここまでデュエマに真摯だったんだと。
そんな時、篠槙さんが私の頭の上に手を乗せてきたのです。
「……なら、ここは両成敗といこう。俺たちの決着はまだ着いていない。だが、このデュエマで勝ったのはお前だ」
優しく撫でられながら、そんな折衷案を提示してきました。
直前までの私なら、それをもつっぱねたのでしょうが……。
頭を撫でられることで私の思考はどんどん柔らかくなっていってしまい、自然と首を縦に動かしていました。
頬が熱く、心臓の鼓動がとても激しい。
ここで私はようやく、自分の想いに気付いたのでした。
彼の死を目の当たりにしたことで自我が一度目覚めたのは何故か。
打算的な告白であったにも関わらず、身体が熱かったのは何故か。
それらは全て、私は既に彼に惚れてしまっていたから……だったんですね。
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