NDB─初めて過るその想い

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「あの時の返事」とは一体なんなのか、すぐには分かりませんでした。 両親のことだったり、罪の意識だったりと数日で衝撃的な事柄がありすぎて、記憶の箱から引き出すことができなかったのです。 ですが数秒の時が経った頃に私はようやく意味を理解することができ、目を丸くしました。 「へ? いや、でも『組織』との戦いに集中したいから、と返事が一先ず保留に……」 篠槙さんが指していたのは、レルードゥさんの撃退後にベッドで養生していた彼に私が告白をしたことでした。 返事は『組織』との決着が着くまで待って欲しい、ということだったので今ここでされるとは夢にも思わなかったのです。 「実はだな。保留にしていた理由はそれじゃないんだ。……瑞稀のことが気にかかっちまってな」 篠槙さんの口から瑞稀さんの名前が出てきた瞬間、私はその先の言葉を悟ってしまいました。 落胆と悲哀の感情が一気にせり上がってきます。 どうやら私は一抹の期待をしてしまっていたようです。 「そう……ですよね……っ。篠槙さんと……瑞稀さんは……お似合いだと、思います……っ」 目尻から溢れようとする涙を必死に食い止めながら、私はせめてもの言葉で彼の後押しをしようとしました。 ですが篠槙さんは少し慌てて、訂正を求めてきたのです。 「違う違う! そうじゃないんだエリーナ」 「ふえ?」 その否定に私はあっけらかんとしてしまいました。 何がどう、違うんでしょうか……? 「まあ……その、なんだ。これ以上誤解がないように、結論を先に言うぞ」 「はい」 後頭部を掻きながら頬を少し赤らめている篠槙さんに返事をします。 この時の篠槙さんの想いは露知らず、私は照れた表情をしている彼を可愛いな、なんて考えていました。 「──俺もお前のことが好きだ。エリーナ」 その一言を聞いた直後、私の頭の中は空っぽでした。 え? そして理解よりも先に、既に乾いていたはずの目尻からポロポロと涙が溢れて行きました。 篠槙さんが私のことを……好き? 嬉しい……っ! 嬉しい!!
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