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「あれは演技なんです」
「演技……」
私の説明をすぐに理解できていない篠槙さんは後頭部を掻きました。
そんな彼に私は更なる真実を告げました。
「私は──ゴルグの……いえ、サブスタンティアティのスパイなんです」
「な……っ!?」
衝撃の真実に篠槙さんは目を丸くし、上体を軽く反らしました。
かく言う私もついに言ってしまったという思いで一杯でした。
もう逃げることはできません。
「どういうことだ……? お前はゴルグの方針転換に疑念を抱いて、ユリアースたちと共にレジスタンスを結成したんじゃ……」
「それは──」
勝手に声が震えてしまうのを感じつつも、私は話し始めました。
自らの正体の仔細を。
自分はゴルグの命令に忠実に従う人形として、沢山の孤児の中から選定されて養子になったこと。
彼の指示によりユリアースさんたちの仲間のフリをし、監視対象であった篠槙さんを引き入れる指示をしたこと。
皆さんを騙しながら、アジト内の情報を適宜サブスタンティアティに流していたこと。
その結果、レルードゥさんがアジトに攻め込み、篠槙さんが闇のゲームに敗北して死に至りかけたこと。
そして仮にゴルグが悲願達成するのが困難になった場合、私が皆さんを殺し、それを代行すること。
それらを聞き終えた篠槙さんは駐車中のバイクにもたれかかりつつ、目を瞑りながら空を仰いだ。
そちら側からすれば突拍子もない話でしょうから、無理はありません。
ですが視線を私の方へ戻した篠槙さんは、問いかけてきました。
「どうして裏切っていたっていう事実を俺に話してくれたんだ? ……エリーナが、自分の言う通り俺たちの敵であるならば、俺たちが明かす必要はないはずだ」
「それは……」
「話してくれ。ここまで話したんだから、全てを教えて欲しい」
私は自我カテクシス欠乏症についての詳細や、自分の記憶の封印については話しませんでした。
それを話してしまうと、まるで許しを乞うているように聞こえそうだったからです。
篠槙さんに話してしまった以上、もう罰から逃れることはできない。
だから言いませんでした。
ですが全てを話すことを命じられたのであれば……話すしかないでしょう。
私は意を決し、大きく息を吸い込みました。
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