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自身が自我カテクシス欠乏症という、自分の意志というものを持てない先天的精神病を患って産まれ、それが命令に忠実な人形としてとても都合が良いことをゴルグに見込まれたこと。
本来は孤児だけを集めた養子選定施設なのですが、その素養が高そうな子供であれば親を殺して強制的に孤児に仕立て上げており、私もその一人であること。
万が一に備え、ゴルグは私に記憶管理装置『ハザード』を使用して、養子選定施設以前の記憶を封印しましたこと。
今度はそれらを、篠槙さんにお話ししました。
「……記憶管理装置『ハザード』。サブスタンティアティはそんなもんも持ってるのか」
篠槙さんは冷静に話の内容を飲み込み、呟きます。
「ごく一部の人だけが知っている装置です。恐らくは歓菜さんもこれによって記憶を思い出せなくされているのかと思います」
「……デッキ・フィーリングを取り込む為に、仲間に引き入れようとしたってことか。そうなれば、記憶がない方が都合が良いだろうしな」
「だと思います」
篠槙さんの考察に、私も同意しました。
ユリアースさんが助け出すのが遅ければ、レジスタンスは歓菜さんと敵対することになっていたでしょう。
当時の私がそれを阻止しなかったのは、自身が篠槙さんをこちらの世界に連れてくる為の準備をしていたからです。
「なあ、エリーナ」
「はい」
「お前は、自分に自我が無い病に侵されていると言ってたが……とてもそうは見えないぞ。これまではそう見せない為の演技をしてんだろうが、今もそうなのか?」
そして篠槙さんが当然の疑問を投げかけます。
私も当然のように返答します。
「いえ、もう演技をする必要はありませんから。今は自らの意志で行動しています。自我カテクシス欠乏症は克服したんです。それは篠槙さんとハラマさんのお陰です」
「俺とハラマが? どういうことだ」
自分がきっかけである自覚はないのでしょう。
私はゆっくりと説明を再開させました。
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